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ベン・カーソン(2016年大統領選挙)Ben Carson: The Pros and Cons by Donald R. Michaels

 共和党指名争いで1位のトランプ氏に続いて、2位を走っているのがカーソン氏です。

政治家の経験も実業の経験も一切なしの元脳神経外科医という、アメリカの大統領選挙候補者としては異色の経歴を持ちます(もし当選すれば、政治家経験なしの大統領は第二次世界大戦で軍の超大物だったアイゼンハワー大統領以来となります)。

カーソン氏はアフリカ系アメリカ人の貧しい家庭に生まれました。8歳の時に両親が離婚しています。母親は13歳で結婚していたので、小学3年生までの教育しか受けておらず、幾つもの薄給の仕事を掛け持ちしながら苦労してカーソン氏とその兄を育てました。カーソン氏は子供の頃、荒れていた時期もあったのですが、高校卒業後に働いたお金と奨学金により名門イェール大学に入学、心理学を専攻し、その後ミシガン大学メディカル・スクールに進み、医者になります。全米トップと言われるジョンズ・ホプキンス病院で脳神経外科医として活躍し、頭部で結合した双子の分離手術の成功などにより広く世に名を知られるようになります。2013年に医師を引退することを発表した後、新聞のコラムニストなども勤めました。数多くの論文と6冊のベストセラーの著者でもあります。

カーソン氏は2014年に共和党員として再登録するなど、共和党員としての経歴は浅いのですが、移民、同性愛者の結婚、銃規制に反対など政治的なスタンスは共和党の典型と言えるものです。熱心なキリスト教信者であり、セブンスデー・アドベンチスト教会のメンバーでもあります(読んだパンフにはエホバの証人と書かれていましたが、エホバの証人は立候補などしないことになっているらしいので、この記述は誤りでしょう。他にも幾つかwikipediaと矛盾する記述があるのですが、この記事ではwikipediaとパンフが矛盾したときにはwikiを優先させています)。基本的に中絶にも反対ですし、気候変動にも懐疑的です。進化論を学校で教えることにも批判的で、進化論者は非倫理的であるとさえ示唆しています。アフリカ系アメリカ人ではありますが、人種がらみの騒乱も人種に起因すると考えるべきでなく、個人としての責任感や公的な権威に対する尊敬の欠如、麻薬やアルコールを簡単に手に入れられることなどによって生じる問題を考慮すべきだとしています。社会保障は依存を生み出しているとして削減を支持し、外交政策タカ派です。医療保険改革ではいわゆるオバマケアに反対で、さすがに元医師なだけあって、この問題では共和党候補者中最も説得力があると評する論者もいるとか。トランプ氏ほどあからさまではありませんが、ポリティカルコレクトネスにも批判的です。

さて、著者の見立てではカーソン氏の利点はまずは自身がアメリカンドリームの体現者であることです。また、カーソン氏自身が素晴らしく優秀であろうことも疑いないでしょう。恵まれない身の上から苦労して医師になり大成したカーソン氏の経歴は、親がお金持ちで私立育ちのおぼっちゃん、トランプ氏と比較するとより際立ちます。黒人の共和党員は「白人に協力する黒人」として運動家からは嫌味を言われたりするらしいのですが、それでも一般黒人層の支持を取り付けられる可能性があります。欠点と言えば、演説の時に細部に拘泥しすぎて何を言っているのかちょっと判らない表現になってしまっていたり、ポリティカルコレクトネスを軽視するので、マスコミに揚げ足を取られがちな点がありますが、この点においてはトランプ氏が遥かに上を行くので大して目立ちません。流石にヒラリー・クリントン氏には勝てませんが資金集めも順調です。さらにこのまま2位の状態で指名争い後半になったとすると、勝てる見込みがなくなり脱落していく候補者が支持する相手として、トランプ氏よりもカーソン氏を選ぶ公算は高いとパンフの著者は述べています。ただ、あまりにもがちがちの共和党路線なので大統領選挙の本選となった時に支持政党なしの浮動層の支持を得られるかは疑問です。政治家経験のなさが災いして、あまりに原理原則にこだわると自滅する可能性もあります。もっとも自滅という点ではトランプ氏の大失言の方がありそうかも知れませんが。

オバマ大統領はイリノイ州議員の経歴もありますが、上院議員としてはわずかに一期を勤めただけでした。旧来の政治に対する疲労感により、何か新しいものを求める心情は確かにあるようで、共和党指名争い序盤では有利と見られていたブッシュ一族のジェブ・ブッシュ氏は5位に沈み、3位グループを形成するのはマルコ・ルビオ氏とテッド・クルーズ氏といういずれも40歳代の若い政治家です。トランプ氏や「完全なるアウトサイダー」カーソン氏もこの、政治に対する倦みといった心情の下ではかなり戦えるのではないかという気が個人的にはしてきました。本選になっても、資金力と知名度ではヒラリー・クリントン氏が圧倒的ではありますが、若さと勢いで地滑り的勝利を飾ったオバマ大統領のような選挙戦が再び展開されないとも限らないと思います。