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ドナルド・トランプ Donald Trump: The Pros and Cons by Donald R. Michaels

アメリカの大統領候補者の一人、ドナルド・トランプ氏に関する自費出版パンフレットのうちの一冊です。さすがに自費出版界でのトランプ氏の勢いも落ちてきた感じがしますが、一時期は毎日のように新しいパンフレットが出ていました。

トランプ氏は日本でもたびたび報道されるように歯に衣着せぬ過激なコメントで有名ですが、共和党から大統領選への出馬を表明するまでも、不動産王(所有する建物に「トランプ・タワー」、「トランプ・プラザ」など自分の名前を付けたりしてます)、人気テレビ番組「アプレンティス」のホスト、自分よりとても若い女性と二度の離婚と三度目の結婚などで知られている存在でした。途中でいくつかの挫折はありましたが、父親の不動産事業を受け継いで大きくした人で立志伝中の人物というわけではありません。学校も小学校から大学までずっと私立ですので、おぼっちゃんみたいな感じです。

本ではトランプ氏の政治的スタンスと大統領候補としての利点や欠点を述べています。

政策面では移民に対して強い反対の立場を取っていることが特徴です。メキシコとの国境にベルリンの壁みたいな壁を作れとか言ってます。建築費が莫大だと反論されるとメキシコに出させろと返します。また、アメリカで生まれた子に自動的に市民権を付与する憲法修正14条の改正も進めるつもりのようですし、現在不法移民として暮らしている人の即時追放やワーキング・ビザや学生ビザの厳格化も訴えています。ただ、移民問題大統領選挙の選挙戦を戦う上ではちょっと微妙な問題です。大統領選挙の序盤、選挙の勢いを決定付けるためにも落とせないニュー・ハンプシャー州やアイオワ州は内陸部にあるため、国境部にある州ほど移民問題が大きな論点にならないためらしいです。

これ以外の政治的問題に関しては大体共和党の路線に沿っています。中絶に関しては1999年くらいまでは中絶容認派だったのが、その後中絶反対派に移行しました。ISISや中国に関しては強硬派、安全保障の観点では国防費の増強、銃規制においてはアサルトライフルなどの強力な武器の携行には反対ですが基本的には銃規制反対派です。減税と税制の簡素化も訴えます。社会保障に関しては他の共和党候補よりも現行制度を擁護する傾向が強いのですが、社会保険に関してはもっと別な制度に置き換えるべきだという意見です。ただ、その置き換えるべき制度についてあまり説明はされていません。同性婚についての立場はあいまいです。以前に中絶容認派だったことと同性婚についてのあいまいさはトランプ氏がキリスト教右派からの支持を今ひとつ取り付けられていない要因にもなっています。地球温暖化についてはでっち上げだと断じ、教育については、競争原理や学校選択制の導入に賛成です。ですが、トランプ氏はがちがちの共和党支持者かというとそうでもなく、歴代大統領の中で一番好きなのがビル・クリントン大統領だといったり、2013年頃まではヒラリー・クリントン氏の大統領出馬を支持するといっていました。1999年にはビル・クリントン大統領に対する共和党の攻撃が激しすぎるとして、共和党を脱退しています(その後復帰)。

さて、大統領選に関してトランプ氏が特徴的なことが幾つかあります。一つは、彼が政治に一切関わったことがないという点です。他の候補者が多かれ少なかれ政治家としてのキャリアの中で国民に不人気な法律を通さざるを得なかったことがあるのに対し、今まで政治に関わったことのなかったトランプ氏は完全に自由な立場で他の候補者を攻撃できます。また、テキサス親父も指摘していますが、トランプ氏はポリティカル・コレクトネスを気にしていません。
【痛快!テキサス親父】トランプ氏が人気のワケ 共和党候補のこの男に拍手喝采だぜ (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK
人種、民族、宗教、性差、性的指向などに対する偏見と取られかねない様な表現を避けたり言い換えたりするポリティカル・コレクトネスは出来るだけ摩擦を避け、多くの有権者の支持を集めるために(好き嫌いは別にして)候補者としては気を付けるべきところではあります。他の候補者がスピーチライターを雇い、発言に慎重を期している一方で、トランプ氏は特にブレーンを雇っている様子もなく、自分の思ったことをそのまましゃべっているようです。さらに、トランプ氏は大金持ちです。選挙のための資金を自分で捻出できるため、しがらみのない言動が出来ます。

しかし、これらの点は共和党の指名争いでは有利に働くかもしれませんが、大統領選には不利な要素となるでしょう。率直な言動は共和党支持者の25%をがっちりと掴むことに働く一方で、反発する層も多く作り、黒人とヒスパニック層での支持率は10%以下、女性人気も芳しくありません。大金持ちなのは様々な企業を率いているからですが、それらの企業は多くの訴訟案件を抱えます。スキャンダルのネタにも事欠きません。いざ大統領となって会社を譲渡したとしても、国民のためではなく、元の自分の企業のために政治をしないという保障もありません。ブレーンを抱えていない政治の素人という点も本格的な政策論戦となった時には不利に働くでしょう。

結局、トランプ氏が大統領になる目はなさそうではあるのですが、共和党として一番まずいシナリオは共和党の指名候補を得られなかったトランプ氏が第三極として大統領選に出馬してしまうことです。こうなると共和党の票が割れてしまうので共和党の敗北が確定してしまいます。お金があって自由もあるトランプ氏を如何に「引かせる」ことが出来るかが共和党の腕の見せ所かも知れません。

大統領選に出馬する前のトランプ氏については、遠慮のない大口叩き、無礼で甘やかされた勇ましい臆病者として認識されていたと本には書いてありました。傍から見ている分にはとても面白いし、大統領に向いてるとはとても思えませんが、ファンが多いのもわかる気がします。大金持ちが好き勝手言ってるだけといってしまうと身も蓋もないのではありますが。