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ルーズヴェルトと孤立主義 The Sphinx by Nicholas Wapshott

ルーズヴェルトの女癖が悪かった話から始まったので、ようやくフランクリンの方のルーズヴェルトについて読めると思いきや、実はケネディ一家のお父さんとリンドバーグについての話でした。副題は Franklin Roosevelt, the Isolationists, and the Road to World War Ⅱ。副題を見たときに気づくべきだったのですが、レビューにはルーズヴェルトの話っぽく書いてあったのですね。ちょっとだまされました。レビューといえば、アマゾンのレビューではこの本は人物の役職名とか細かいところで色々と間違いがあるそうです。実際読んでいても、いきなり何の紹介もなく人物名が出てきたりして、何だか草稿のまま出版されてしまったような印象がありました。

ちょっと前にオバマ大統領が「われわれは世界の警察官であるべきではない」と言ったりしていますが、アメリカはもとから世界の警察だったわけではありません。建国の父ジョージ・ワシントンがすでに、ヨーロッパの同盟関係に巻き込まれるなと言っていますし、その後もアメリカ大陸とヨーロッパ大陸の相互不干渉を旨とするモンロー主義が、長くアメリカの外交方針でした。風向きが大きく変わったのはウィルソンのもと第一次世界大戦に参戦し、ヴェルサイユ体制に大きく関わってからなのでしょうが、アメリカの議会の孤立主義傾向は根強く国際連盟にはアメリカは参加しないことになります。第二次世界大戦でドイツがポーランド、フランスを落とし、イギリスを攻撃するに至ってもアメリカは表面上は中立でした。このアメリカが徐々にイギリスに肩入れし参戦していく過程を追ったのが本書ということになります。

ただ、記述の中心は二人の孤立主義者、後に大統領や上院議員(今の駐日大使も)を輩出したケネディ一家の父親と、大西洋単独無着陸飛行でおなじみのリンドバーグです。

ケネディ父は投資家として財を成し、政界への進出を望んでフランクリン・ルーズヴェルト資金援助をしてつながりを持ち、駐英大使に任命されます。ヒトラーに対して懸命に融和政策を取っているネヴィル・チェンバレンと仲良くなって、とにかく戦争が起こらないように、起こってもイギリスがすぐ負けて、アメリカだけは戦争に巻き込まれないように、みたいな感じで活動します。本人も大統領職に色気があったりで、ルーズヴェルトとの関係はどんどん悪化しますが、息子たちの政界での成功を夢見ているので、あんまり大統領の方針に逆らうと息子さんたちの将来に良くないよ?と匂わされるとあっさり妥協してしまうのがお父さん属性です。

リンドバーグは大西洋横断ですっかり有名になった後、ドイツの航空産業を視察するためのアメリカの使節団に同行しますが、そこでドイツに魅了されます。ドイツの航空生産力はすごい、ヒトラーすごい、ドイツには勝てない、みたいな感じになります。たとえヨーロッパで戦争になってもどうせフランスやイギリスはすぐに負けるので、アメリカは自国の国防に専念しよう、ヨーロッパがドイツのものになったらドイツとうまく付き合えばいいという主張をします。ドイツから勲章をもらったり、本人がユダヤ人嫌いだったりで色々叩かれますが、孤立主義者の団体に参加してスポークスマン的に頑張ります。

大抵の人は戦争とかしたがらないので、孤立主義は根強い人気があったのですが、そこをドイツ嫌い、イギリスびいきのルーズヴェルトがイギリスの戦いは民主主義を守るための戦いとか、イギリスが落ちれば次はアメリカだからイギリスを守ることがアメリカを守ることに繋がるとか言い出して、アメリカを徐々に参戦の方向に誘導していきます。今話題になっているところでは集団的自衛権ということになるでしょうか。孤立主義者の目がヨーロッパに向いている陰で、日本に対しては通商条約の破棄や、原油やくず鉄の禁輸、中華民国に対する軍事援助など色々やったのが奏功して、日本がアメリカに対して攻撃し、それに応じてドイツもアメリカに宣戦布告することで結局アメリカは参戦することになります。

孤立主義者といえども、攻撃されて戦争になってしまえば戦争に勝つことが第一目標になるわけで、戦争協力をします。特にリンドバーグはかつてのしがらみから軍に入れてもらえなかったので、民間の航空会社で輸送にあたり、後にはF4UコルセアとかP38ムスタングを駆って日本軍と戦闘しちゃったりしてます。

さて、日本でも安保法制を巡って安倍首相をヒトラーになぞらえる人がいるようですが、今の日本はあからさまに他国の領土を要求しているわけではなく、議会を停止しているわけでもありません。ドイツ帝国普仏戦争によって出来た国であり、第三帝国においても戦争に対する忌避感はそれほど大きくはありませんでした。対して日本に憲法第九条があるのなら、第二次世界大戦以前のアメリカには建国以来の伝統があり、ヨーロッパの戦争に巻き込まれることにはとても強い警戒感を抱いていました。そのアメリカを戦争の出来る国に変えたのがフランクリン・ルーズヴェルトだとするならば、今の日本を戦争の出来る国に変えようとする政治家、とのアナロジーで「安倍はヒトラー」とするのはとても奇妙に感じます。むしろ「安倍はルーズヴェルト」でしょう。流行らないとは思いますが。

なお、原題のスフィンクスルーズヴェルトが自分の政治姿勢や立場を極力明らかにせず、状況に応じて柔軟に対処することを好んだことから、ルーズヴェルトに付けられたあだ名だそうです。それから、本の中にチャップリンの「独裁者」の話題がありました。今でこそ反戦映画の扱いを受けている感がありますが、当時は反ドイツ感情を煽る戦争志向の映画として孤立主義者の団体に槍玉に挙げられていました。

アメリカの歴史の話が続いたので次は目先を変えてフェアートレードの話を読む予定です。ちょうど、中学三年生のニューホライズンフェアートレードを扱っている単元に入っているところですし。